マルマライ計画(マルマライけいかく、Marmaray project)はボスポラス海峡を横断する海底鉄道トンネルにより、イスタンブルのヨーロッパ側とアジア側を接続する計画の名称である。Marmarayの名称は計画区域のすぐ南にあるマルマラ海(Marmara)と、トルコ語で鉄道を意味するrayのポートマントーである。
計画では、事業区間はボスポラス海峡を横断する13.6 kmの区間と既存設備を改良する63 kmの郊外区間に分けられ、ゲブゼ‐ハルカル間、計76.3 kmは高頻度運転路線となる予定である。
海峡区間は、最大で長さ135m、重さ18,000トンにもなる11個の函を組み立てた全長1.4 kmの地震でも安全な沈埋トンネルにより横断する。これらの函はもっとも深いところで海面下約60mの場所に置かれる。海水部分が55m、海底部分が4.6mである。
この海底トンネルはイスタンブルのヨーロッパ側のカズルチェシュメとアジア側のアイルルクチェシュメ(Ayrılıkçeşme)から掘られたトンネルと接続される予定である。
地下駅としてユスキュダル駅(新設)、シルケジ駅、イェニカプ駅が建設され、37駅は改築あるいは改装される。イェニカプ駅ではイスタンブル地下鉄およびライトレールと接続予定である。郊外線の改良区間では3線目の線路が追加され、両方向とも輸送能力が 7万5000人/時に増やされる。ゲブゼ‐ハルカル間を104分で結ぶ予定である。
マルマライ計画は2004年5月に建設工事が始まった。マルマライトンネルは2008年9月23日に完成し、公式セレモニーは10月13日に催された。本プロジェクトの完了は2012年とされているが、2012年あるいは2013年に営利サービスが開始されることが予定されている。
完成すると、イスタンブルにおける公共交通における鉄道利用が3.6%から27.7%に上昇し、東京の60%、ニューヨークの31%に次いで世界第3位になるとされている。
2008年11月11日に現代ロテムはこのプロジェクト向けの車両の供給を5.8億ユーロで契約したと公表した。現代ロテムは交通省が提示した440両の製造に関する競争入札において、アルストム、CAFとボンバルディア・シーメンス・Nurolのコンソーシアムに勝利した。
全長 22m のステンレス車は5両編成または10両編成で組成される。現代ロテムとトルコの車両製造メーカーツヴァサスの合弁会社ユーロテムにより製造される車両もある。車両は3次に渡って製造され、最初の2011年には160両製造され、2014年に完了する予定である。
計画は2008年現在、2年遅れで進行しているが、この遅れは海底トンネルのヨーロッパ側の終端予定地でのビザンティン帝国時代の遺跡の発掘が大いに関係している。「2005年に、4世紀のコンスタンチノープルの港 Portus Theodosiacus の遺跡を掘り当てた。」さらに発掘により、アンフォラを含む古器物加工品、陶器の欠片、貝殻、骨、馬の頭蓋骨、袋の中に入った9つの人間の頭蓋骨等、イスタンブルにおける定住の最古の証拠が掘り出され、紀元前5000年より前から人間がイスタンブルに住んでいたことが分かった。
トンネルは北アナトリア断層から18kmしか離れていないため、心配する技術者や地震学者もいる。1万人以上が死亡した巨大地震が知られているだけでも2桁は発生している。30年以内にマグニチュード7.0以上の地震に見舞われる可能性が最大77%になると科学者により見積もられている。トンネルが建設される場所の下の水を多く含み泥のような土壌は地震で液状化することが知られており、技術者は安定にするために海底下24mに工業用セメントを注入している。トンネルの壁面は防水コンクリートと鋼鉄のシェルでできており、それぞれが独立して水の浸透を防ぐ。地震が発生した場合に、高層建築物のように曲がるように造られている。壁が壊れた場合には、函の接続部にある水門が閉まり、水を隔離できる。
建設工事を監督している国際コンソーシアム Avrasyaconsult のプロジェクトマネージャー Steen Lykkeはそのことを要約して「このプロジェクトに欠けているチャレンジは思いつかない」と発言している。
マルマライ計画に対し、国際協力銀行と欧州投資銀行が主に援助している。2006年4月までに、国際協力銀行が1110億円、欧州投資銀行が10億5000万ユーロを融資している。マルマライ計画の総工費は約25億ユーロ(約4100億円)と見積もられている。