王立エル・エスコリアル聖ロレンソ修道院(おうりつえるえすこりあるせいろれんそしゅうどういん)はスペイン、マドリッド郊外のサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルにある広大な宮殿、修道院、博物館にして図書館の複合施設である。サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルはマドリッドの北西45kmに位置する町(マドリッド県) である。
シエラ・デ・グアダラマ山脈の麓にこの複合施設は国王フェリペ2世の命令で王家の古墳でありスペインの反宗教改革の研究を目的として建てられた。これはフアン・バウティスタ・デ・トレド、 ヒアンバティスタ・カステリョ、フアン・デ・エレラの3人の建築家によって厳格な古典様式にデザインされ、1563年から1584年にかけて造営された。建物は、聖ロレンソの殉教を記念するために格子型に形成されている。1557年の聖キンティーンの戦いでは、スペイン軍はロレンソに捧げられた小さな庵を破壊したという。国王フェリペ2世は、勝利を授かった礼として聖人に修道院を奉献することを決断した。
エル・エスコリアルの建築群は芸術の莫大な宝庫であり、そこにはティツィアーノ、ティントレット、エル・グレコ、ディエゴ・ベラスケス、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン、パオロ・ヴェロネーゼ、アロンソ・カノ、ホセ・デ・リベーラ、クラウディオ・コエリョなどの芸術家の傑作が収蔵されている。この建築群にはまた無数のかけがえのない古代の古文書を蔵書した図書館がある。
ここは5世紀の間、アブスブルゴ(ハプスブルク)家およびボルボーン(ブルボン)家の最多のスペイン国王の埋葬場所であった。
王家の霊廟にはカルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)、フェリペ2世、フェリペ3世、フェリペ4世、カルロス2世、ルイス1世、カルロス3世、カルロス4世、フェルナンド7世、イサベル2世、アルフォンソ12世の墓が含まれている。2人のボルボーン家の国王フェリペ5世とフェルナンド6世は、アマデオ1世と同じく修道院に埋葬されている。
この複合施設はユネスコ世界遺産である。きわめて人気の高い観光スポットで、旅行者はマドリッドから日帰りで訪れることが多い。
サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルの周辺都市は、マドリード・コムプルテンセ大学の人気のある夏季コースの拠点でもある。同様に「エル・エスコリアル」と名づけられている麓の町には、スペイン全国鉄道網(RENFE)の同じ名前の駅がある。
エル・エスコリアルの近くには世界最大の十字架のある「ロス・カイドス谷の聖十字の国民記念碑」(Monumento Nacional de Santa Cruz del Valle de los Caidos)がある。