イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(英語: The University of Illinois at Urbana–Champaign, UIUC)は、米国イリノイ州アーバナおよびシャンペーンに本部を置くアメリカ合衆国の州立大学である。1868年に設置された。 イリノイ大学システムはスプリングフィールド校、シカゴ校、アーバナ・シャンペーン校から構成されるが、一般に「イリノイ大学」という場合にはイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の事を指す。アーバナ・シャンペーン校はイリノイ大学群の中核たる旗艦校である。アメリカ中西部における屈指の名門校とされ、同国東部の名門私立大学群であるアイビーリーグに対し、公立でありながらそれ同等の名門校群であるパブリック・アイビーの1校である。2016年現在、U.S. NewsのTop Public Schoolsランキングによると全米第11位となっている。[1] Academic Ranking of World Universities 2010において世界で第25位を獲得、中でも工学系の専攻は、世界第4位にランクされた。 イリノイ大学の著名な発明には、LED(発光ダイオード)やMosaicがある。また、コンピューターサイエンスに強みがあり、ビル・ゲイツ氏は2004年2月のスピーチで、マイクロソフト社は全世界のどの大学よりもたくさん同大学のコンピュータ・サイエンス学科の卒業生を採用したと言った程である。[2] また、Youtubeの設立者であるスティーブ・チェンの出身校でもある。
1862年、農業および工業技術開発の促進のため、州が公有地を大学用地として許与するモリル・ランドグラント法が成立。それにより、1867年にイリノイ産業大学として創立、翌1868年に開校した。1885年にイリノイ大学と名称が変更されたが、1982年にイリノイ大学の他キャンパスと区別するため、現名称であるイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校と改められた。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校はイリノイ大学システムの中では最も古く、規模も最大であり、業績・入学難易度共にトップに位置する。
大学は17の学部で構成され、150以上の専攻を有する。キャンパスは、互いに隣接するアーバナ市とシャンペーン市にまたがり、1468エーカー(6平方キロメートル)の敷地に266の建物がある。
キャンパスの主要部はQuad(四辺形)と呼ばれる長方形の広場で、主として総合・一般教育を行うビルがそれを囲んでいる。南側のフォーリンジャー公会堂を挟んでUndergraduate Libraryという学部学生用図書館があり、更に南にはビジネス系のキャンパスが広がる。北側には1997竣工のGrainger Library新図書館がある。新図書館よりさらに北の部分は工学系のキャンパスである。このように、大学敷地は南北に長いが、その外縁の道を時計回りに循環する2両連結バス(LOOP号等)が運行しており、これは学生証 (I-Pass) を提示すれば無料で利用できる。他にも、アーバナ・シャンペーンの2市内のバス (MTD) は、学生であればすべて無料で乗車可能。
これら教室ビルを囲んで学生寮やアパートがあるが、特別な事情がない限り、学生は2年間大学寮に入らなければならない。彼らのほとんどは北東の角に位置するIllinois Street Residence hall(通称ISR)、又は南西の角に位置する6連棟Champaign Residence Halls(通称Six Pack)に入る。キャンパスから少し離れた場所にある大学病棟のさらに南東にはPennsylvania Avenue Residence Halls(通称PAR)とFlorida Avenue Residence Hallsがある。
前述のUndergraduate Libraryの隣には、100年単位の遺伝子実験材料である、遺伝子組み換え済みのトウモロコシ畑(20メートルほど)がある。 隣接するサヴォイ町 (Savoy) のウィラード空港 (Willard Airport) は大学の所有地であり、航空学部の実習はここで行わる。本来小型機用に設計された空港ではあるが、中・短距離向けに燃料を補給したボーイング747型機なら離着陸が可能な2,500m級滑走路を含め、計4本の滑走路がある。第42代アメリカ大統領ビル・クリントンが来訪した際、専用機エアフォースワンが滑走路を低速で走行中、排水側溝に脱輪したことがあり、その後、同空港の滑走路脇には再塗装が施された。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校は17の教育研究組織で構成されている。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の学部課程は、2015年のUS Newsランキングにおいて、全米大学総数およそ4000校中41位、州立大学中11位にランキングされており、イリノイ州のみならずアメリカ合衆国中西部を代表する大学の1つである。また、世界大学ランキングでは1000以上の大学の中から25位にランクインしている。中でも工学、コンピューターサイエンス、図書館情報学、会計学、心理学などにおいて全米屈指のレベルを誇る。
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これまで21人の卒業生または教授がノーベル賞を受賞しており、20人がピューリッツァー賞を受賞している。中でも、ジョン・バーディーンは「半導体の研究およびトランジスタ効果の発見」と「超伝導現象の理論的解明」により、ノーベル物理学賞を2度受賞している。ノーベル物理学賞を2度受賞したのはジョン・バーディーンのみである。また、アンソニー・レゲットがノーベル物理学賞、ポール・ラウターバーがノーベル生理医学賞を受賞している。
1977年に六界説、1990年に三ドメイン説という生物の分類体系を提唱したことで有名なカール・ウーズは現在イリノイ大学の教授である。
YouTube共同創立者のスティーブ・チェンやジョード・カリム、Paypalの共同創立者マックス・レヴチンもイリノイ大学のコンピューターサイエンスの卒業生。
黎明期のコンピュータおよびスーパーコンピューティングに名を残したILLIACシリーズ(ILLIAC I、ILLIAC II、ILLIAC III、ILLIAC IV)をはじめ、コンピューティングに関する研究がさかんである。
「2001年宇宙の旅」作中の宇宙船の頭脳であるコンピュータHAL 9000は、本校のあるアーバナにあるという設定のHAL研究所で開発されたという設定になっている。
著名な機関として米国立スーパーコンピュータ応用研究所 (NCSA) がある。ここは(後にネットスケープコミュニケーションズを設立する)マーク・アンドリーセンが画像をレンダリング可能な最初のHTMLブラウザであるMosaicを他のメンバとともに作り上げた場所である。それ以前の1987年にはNCSAは利用者が、仮想的に端末に接続し、計算機資源を遠隔地から利用できるようにするプログラムであるNCSA telnetをつくり出している。
現在、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とIBMの共同で、ペタスケール(ペタFLOPS級)のスーパーコンピュータBlue Watersを建設中であり、2011年に完成予定である。
この学校のスポーツチームは「The Fighting Illini」(戦うイリニ族)であり、このチーム名は、実在のインディアン部族である「」の名を借用したものである。 激戦区ビッグ・テン・カンファレンスに所属し、特に男子バスケットボールは全米トーナメントに度々出場する有力チームである。同チームは2005年に37勝2敗という同校史上最高の成績を残した。シーズン中はオハイオ州立大学に僅差で敗れた1敗のみ、ビッグ・テン・トーナメントは優勝、全米トーナメントでも準優勝に輝いた(優勝はノースカロライナ大学)。応援団兼マーチングバンドである「The Marching Illini」もまた高い評価を受けている。
大学の運動部のシンボルはインディアン民族 のステレオタイプである、「イリニウェク酋長」という白人学生が演じる「インディアン・マスコット」である。
特定の民族を動物のように扱った人種差別の典型として、この「イリニウェク酋長」、「戦うイリニ族」は、現在も「アメリカインディアン運動」(AIM)、「スポーツとメディアの人種差別に関する全国連合」(NCRSM)を始めとする、多数のインディアン団体や個人から、その変更廃止を求めての激しい抗議運動を受け続けている。しかし、イリノイ大学は現在もその要求に応じる姿勢を見せていない。
本拠地であるメモリアル・スタジアムは、2002年にNFL・シカゴ・ベアーズが従来の本拠地であるソルジャー・フィールドが改修のため暫定的に使用された。