エンパイア・ステート・ビルディング(Empire State Building)は、アメリカ合衆国ニューヨークのマンハッタンにある超高層ビル。「エンパイア・ステート(帝国州)」はニューヨーク州の愛称である。
建築家集団、リッチモンド・H・シュリーブ、ウィリアム・ラム、アーサー・L・ハーモン()の3名によって設計されたエンパイア・ステート・ビルディングは、マンハッタン島を代表する高級ホテルであるウォルドルフ=アストリアが建っていた跡地に建設された。工事はクライスラービルから「世界一の高さのビル」の称号を奪うために急ピッチで行われ、1931年に竣工したが、世界恐慌の影響でオフィス部分は1940年代まで多くが空室のままであった。そのため、「エンプティー(空っぽの)・ステート・ビルディング(" State Building")」と揶揄(やゆ)されることもあったが、戦後は多くの人々が訪れる観光名所となり、1972年にワールドトレードセンターのノースタワーが竣工するまでの42年間、世界一の高さを誇るビルとなっていた。完成して55年が経った1986年には、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されるなど、ニューヨークのシンボルの一つとして認知されていった。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件によってワールドトレードセンターが破壊されてしまった際には、ノースタワーを電波塔にしていた各局が放送不能となるが、WCBS-TVはエンパイア・ステート・ビルの電波塔を活用し、放送を続けた。テロ後、WCBS-TVは被害を受けた各局に電波送信スペースの貸し出しを行った後、2005年より地上波テレビ各局の電波塔がこのビルに集約されることになった。
2009年現在、ワールドトレードセンターの崩壊という痛ましい理由からではあるが、再び「ニューヨークで最も高いビル」となっている。1 ワールドトレードセンターが完成する予定の2013年まではこの状態が続くことになる。
ビルの総床面積は20万4,385m²におよび、質量は全体でおよそ33万 t ある。6,500個の窓や73基のエレベーター(貨物用の6基を含む)、1,860個の階段などで構成されている。
最上階である102階の床面は地上373.2m(1,224 ft)の高さにあり、軒高(本体構造物の最高所の地上高)は381.0m(1,250 ft)である。また、1950年代に付け加えられた上部付属施設である電波塔(67.7m〈222 ft〉)を併せた場合の地上高は443.2m(1,454 ft)である。
最上階付近一帯と電波塔にはイルミネーションによる光の演出が施されており、日によって色の変化を見せる(右上、テンプレートの画像を参照)。かつては尖塔部分に飛行船を係留できるようになっていたが、現在は電波塔が設置され、テレビ・ラジオ用送信用アンテナ機材が取り付けられている。
頂上はニューヨーク・エリアにおけるテレビ・ラジオの電波塔としての役割も持っており、以前よりWCBS-TVがこのビルをサブの電波塔として利用していた(テロが起きるまでは、メインはワールドトレードセンターであった)。
1945年7月28日の9時49分、深い霧の中をニュージャージー州のニューアーク・リバティー国際空港に着陸しようとしたアメリカ陸軍の中型爆撃機 B-25 ミッチェルが、79階の北側に衝突して機体が建物に突入するという事故が起こった。衝突時の衝撃で機体から脱落したエンジンがエレベーターシャフトを破壊し、79階と80階で火災が発生したが、約40分後に消火された。
乗員3名を含む死者14名を出したものの、着陸直前で燃料の搭載量が少なかった上、比較的小型の機体であったことから、建物自体への損害は比較的少なく、事故後2日で営業を再開している。なお、この事故でエレベーター1基のケーブルが切断され、エレベーターガールを乗せたまま約300m落下した。エレベーターガールは全治8ヶ月の重傷を負ったが、奇跡的に生存した.。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の際には、エンパイア・ステート・ビルにもハイジャック機が向かっているという流言が一部で流れた(この噂は、テロリストの意図に基づくデマゴギーであった可能性も排除できないが、証拠が無い)。この影響でビル内部にいた職員などが急遽、避難するといった混乱も見られた。
エンパイア・ステート・ビルはさまざまな映画や小説に出ているが、とりわけ有名なのは特撮映画『キングコング』であろう。人間の所業に怒り狂うコングは、エンパイア・ステート・ビルに故郷の断崖を見たか、外壁を剥がしつつよじ登り、頂上で野生を叫ぶ。しかし、文明の象徴でもあるその場で森の王者の命運は尽き、人々には問い掛けが残される。
なお、キングコングがこのビルに登ったのは、1933年製作のオリジナルと、2005年製作のオリジナルの筋立てに忠実なリメイク版の2回。1976年製作のリメイク版で登っているのは、ワールドトレードセンタービルであった。これにはエンパイア・ステート・ビルの関係者から「何故うちに来ないのか」との抗議の声が挙がったらしいが、その時代のニューヨークで一番高いビルにキングコングは登っているのである。つまり、1933年にはエンパイア・ステート・ビルが、1976年にはワールドトレードセンタービルが、2005年にはエンパイア・ステート・ビルがそれであった。
エンパイア・ステート・ビルは、米国土木学会(ASCE)によって2001年、20世紀の10大プロジェクトを選ぶ「モニュメント・オブ・ ザ・ミレニアム()」の「高層ビル」部門に選定された。これは、20世紀最高の高層ビルと認められたことを意味する。
なお、この「モニュメント・オブ・ザ・ミレニアム」は他に9つの部門を設けており、例えば「水路交通」部門ではパナマ運河、「ダム」部門ではフーバーダム、「空港の設計・開発」部門では関西国際空港が、「鉄道」部門には英仏海峡トンネル、「長大橋」部門にはゴールデンゲートブリッジが選定されている。
エンパイア・ステート・ビルディングからの 360°パノラマ
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