特色
北部のアウク川流域は、雨季には氾濫によって一面が水没する一方、乾季でも干上がることがない。このため、その一帯には、10000~15000羽程度生息するとされるハシビロコウをはじめ、ペリカン類(コシベニペリカン、モモイロペリカン)など多くの水鳥が生息している。この国立公園には、サンショクウミワシやアフリカハゲコウといった猛禽類も生息しており、野鳥類は全部で320種にのぼるとされている。
南部に広がるサバンナには、多くの大型哺乳類が生息している。ゾウ、クロサイ、イボイノシシ、カバ、コリンガゼル、ダイカー、アフリカスイギュウ、ライオン、チーター、アヌビスヒヒ、サバンナモンキーなど50種以上が生息している。
登録基準
この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
危機遺産登録
1980年代に近隣のスーダンとチャドで内戦が起こり、活動資金を求めたゲリラたちによる密猟が横行した。彼らの密猟の結果、8万頭いたとされるアフリカゾウはわずか数年で数千頭単位にまで激減し、クロサイにいたっては6000頭以上いたとされるものが10頭程度と、ほぼ絶滅寸前にまで追い込まれた。こうした動物は角や牙が高額で取引されたために、特に標的となりやすかったのである。
ヨーロッパ開発基金はこの国立公園の管理・維持のために1988年から援助を行っているものの、横行する密猟、スーダンからの難民の流入などによる環境の悪化を理由として、1997年に危機遺産に登録された。
参考文献
- ユネスコ世界遺産センター(監修)『ユネスコ世界遺産 (12) 中央・南アフリカ』講談社、1997年
- 中川武 三宅理一 山田幸正(監修)『世界遺産を旅する・第12巻(エジプト・アフリカ)』近畿日本ツーリスト、1999年
関連項目
- 世界遺産の一覧 (アフリカ)