レノンの土柱 (レノンのどちゅう、伊:Piramidi di terra del Renon )とは、イタリアトレンティーノ=アルト・アディジェ州ボルツァーノ自治県レノン(ドイツ語名リッテン)にある土柱である。リッテンの土柱(リッテンのどちゅう、独:Erdpyramiden am Ritten )ともいう。
レノンの土柱は、イタリア北部ボルツァーノ自治県(南チロル地方)の県都ボルツァーノ近郊のレノン(ドイツ語名リッテン)にある。レノンの土柱は一所ではなく、ロンゴモゾとモンテ・ディ・メッツォの間にあるフィンスターバッハ(Finsterbach )川の渓谷、ソプラボルツァーノの足下に位置するカッツェンバッハ(Katzenbach )川渓谷、及びアウナ・ディ・ソットにある渓谷の三所に分かれている。
レノンの土柱は、土の塔の上に岩を帽子のように被った奇妙な形状をしているが、侵食という自然現象が作り出した地形である。激しい雨が降ると、この辺りの土壌であるモレーン(氷堆土)は急速な侵食を受け土砂崩れを起こして削り流されてしまうが、岩の下にある土壌だけが保護され、土柱となって残される。ボルツァーノ自治県には土柱が散在しているが(「南チロルの土柱」参照)、レノンの土柱はそれらを代表する存在とみなされ、観光地となっている。
レノンの土柱は、氷河期の終わりに、後退する氷河に取り残されたモレーン(氷堆土)が侵食作用により削られて生じた地形である。モレーンは、乾燥している環境では石のように硬いが、水分を含むと柔らかい泥状に変化する性質を持っている。激しい雨が降ると、水分を含んだモレーンが軟化して地盤が緩み、土砂崩れが生じるようになる。さらに雨が降り続けると、岩の下以外の土壌は侵食により削り取られてしまうが、岩の下の土壌は保護されて侵食を受けず、土の塔のような形になって残される。これが土柱である。地元では、土砂崩れの塔という意味の「ラーンテュルメ」(独:Lahntürme )と呼ばれている。
土柱の頂上に帽子のように乗っている岩は、土柱を侵食から守る役割を担っている。土柱は常に侵食にさらされているので、この「帽子」が何らかの理由で無くなると、土柱は急速に削られて小さくなっていき、やがて姿を消す。しかし、土柱が無くなった場所にまた新たな土柱が生じることがある。