ニュルブルクリンク(独:Nürburgring)はドイツ北西部ラインラント=プファルツ州・ケルンより南に約60km離れたニュルブルクにあるサーキット。北コースと南コースがある。
古くからモータースポーツの最高峰であるフォーミュラ1や、世界三大耐久レースの一つでもあるニュルブルクリンク24時間レースの開催地であり、1995年から1997年にかけては2輪の最高峰であるロードレース世界選手権(WGP)も開催された。
モータースポーツの他にも、マラソン大会、自転車レース、ロックイベントなどが行われている。
ニュルブルクリンク24時間レースに関して、同レース主催者ADAC Nordrhein e.V.は日本人の三浦健史を世界で唯一、大会公認コミッショナー/コーディネーターとして認定している。[]
第一次世界大戦に敗れたドイツで、当時の政府が失業者に職を与えるために建設した。1927年の開設当初は全長が22.8kmの巨大な北コース(独:Nordschleife)と全長7.7kmの南コース(独:Südschleife)の2つに分かれており、現在は北コースが20.8km、南コースが5.1kmとなっている。
当初の名称はNürburg-Ringだったが、1933年にナチスがドイツのモータースポーツ全体に資金援助を行った事で改修され、このときに名前からハイフンが取られNürburgringとなった。
1950年代のF1創成期からその開催地として利用され、幾度かの中断やレイアウトの変更を重ねながら、現在もホッケンハイムリンクと共に、ドイツ国内でのF1の開催地に名を連ねている。また、名物であるニュルブルクリンク24時間レースの開催地としても有名である。
2007年からドイツ国内のF1グランプリをホッケンハイムリンクと隔年で交互開催することとなったため、2008年はF1グランプリが開催されなかった。
なお、ここで開催された1964年のF1西ドイツGPでホンダが日本の車として初めてF1に出走した。
豊かな森の中にある古城ニュルブルク城を囲む北コース"ノルドシュライフェ"の特徴として、
などの過酷な条件が揃っており、世界最長、そして世界有数の超難関コースとして知られ、車両の総合的な性能がタイムに反映されやすいことから、スポーツカー等の自動車開発時にテストサーキットとしてよく利用されている。日本ではホンダ、日産、スバル、三菱などが主に利用しており、世界的に見ても、著名な自動車メーカーのほとんどはここでテスト走行を行っている。
唯一ここでテスト出来無いのは「250~300km/hからのハードブレーキングのみ」とも言われる。
ドライバーにも体力面、精神面、双方に多大な負担がかかる。長い上に様々なバリエーションのコーナーを伴ったコースであるため、まずコースを覚えること自体が難しく、そのうえ幅員の狭い荒れた路面を高速で長時間車を走らせなければならない。技術だけでなく、経験や集中力さらには勇気と体力も必要とされ、ドライバーは極限状態にさらされる。
このような過酷な特性を持つ上、コースの長さからマーシャルなどのコース周辺に必要な要員確保の都合などもあり、車の性能が上がるに従って、レースなどの極限の速さを競うイベントでは使われなくなっていった(レースの項を参照)。
しかしこのことで今でもこのコースに憧れるドライバーは多数存在しており、セバスチャン・ベッテルは「ニュルブルクリンクの北コースは別格、だってもう走れないからね」と取材に応えている。
北コースのラップタイムは、300馬力程度のスポーツカーで8分前後、レーシングカーでも7分程度かかる。以下に主な記録を上げる。
改修後の全長22.810kmの記録
なお、北コースは法的には一般有料道路に位置づけられており、貸し切り日以外は一般の人も料金(1周22€/2009年4月現在)を支払えば自分の車でサーキットを走行することも可能だが、北コースで起きた事故に関しては自動車保険が適用されない。
またコースのアスファルト上に、テストを行ったメーカーやドライバーなどがチョークで書いた、自動車会社のエンブレムなどの落書きがいたる所に見られる。
ホームストレートは大きく下っている。以前の1コーナーは右→左と切り返すシケインであったが、2002年の大改修により鋭角なヘアピンに変更。インフィールドエリアであるメルセデスアリーナを経由する。オーバーテイクポイントでもある西端のダンロップヘアピンまでは延々と下る。ダンロップヘアピン通過後は一転して急激な上り勾配となり、スピードに乗せてシューマッハーSを通過。90度ターンからビットコーナーを抜けてバックストレッチへ。高低差が激しいバックストレッチの途中には超高速右コーナーのボーゲンコーナーがある。ボーゲンを抜けるとフルブレーキでシケインへ、最終コーナーを大きく旋回し1周となる。
なお、シケインと最終コーナー周辺には北コースへの連絡通路が垣間見える。
ニュルブルクリンクでF1が開催され始めたころには北コースが使用されていた。しかし、上記にもある通り起伏が激しく、車がジャンプする地点があるなど、車の性能が向上するに従って危険性が増していった。そして1976年のF1ドイツGPのレース中に、前年のチャンピオンドライバー、ニキ・ラウダの運転するフェラーリが大事故を起こし、北コースの危険性が改めて浮き彫りにされ、そのレース以降、北コースでF1が開催されることはなくなった。その後ドイツGPは、長年にわたりホッケンハイムリンクで行われることになった。そして1984年に全長4.5kmの新たな南コースが建設されると、その年にはヨーロッパGPが、翌1985年にはドイツGPがこの南コースで開催された。1986年以降のドイツGPはホッケンハイムに戻るが、1995年に再度ニュルブルクリンクでF1が行われた。ビートルシケインの形状が小変更された後、2002年には1コーナーから2コーナーにかけて大きくレイアウトが変更されたため、南コースの全長は5.1kmとなった。現在のF1ではこの南コースを使用しているが、現在でもニュルブルクリンク24時間レース等で北コースも使用されている。ニュルブルクリンク24時間レースでは、ほぼDTM仕様と言って差し支えない純粋なレース車両からプライベーター所有のフォルクスワーゲン・ゴルフのような小型車やディーゼルエンジンのベンツ190E、さらには往年の歴史的名車など、様々な車両が1分程度の時間差でスタートし、狭いコースを混走する。また、24時間レースでは、北・南両コースをつなげて使用され、スタート・ゴール、ピットは南コースが使用される。他に、カミオン(トラック)レースも行われている。
なお、北コースにおける近代F1マシンの走行は長らく行われていなかったが、2007年4月28日に開催されたイベントのデモンストレーションにおいて、ニック・ハイドフェルドの運転するBMWザウバー「F1.06」が、31年ぶりに北コースを走行した。過酷な北コースの路面を近代F1マシンで走行するのは非常に危険性が伴うため、車高を最大に上げ、タイヤもバースト回避のため非常にハードなものを使用することでマシンを適応させ、コースを3周した。デモンストレーションのための安全重視の走行で、ギア比もショートレシオに設定していたこともあって、ファステスト・ラップは8分34秒、トップスピードは275km/hにとどまっている。
20km以上にも及ぶ長大さのため、かつては北コースをゲームに収録することは極めて困難であったが、近年、家庭用テレビゲーム機の性能向上に伴い、収録されることが増えてきた。その先駆となったのは、2003年に発売されたマイクロソフトのXbox用ソフト「プロジェクト・ゴッサム・レーシング2」であり、TVゲームで初めて北コースが収録された。続く2004年には、ソニー・コンピュータエンタテインメントからプレイステーション2用ソフト「グランツーリスモ4」が発売された。
その後も、「フォルツァ・モータースポーツ」シリーズ(マイクロソフト、XboxおよびXbox360用)、「エンスージア プロフェッショナル レーシング」(コナミ、PS2用)、「3」以降の「プロジェクト・ゴッサム・レーシング」シリーズ(マイクロソフト、Xbox360用)など、続々と北コースを収録するゲームが登場、そのリアリティを競っている。また、2009年にはPSP用ソフト「グランツーリスモ」にて、携帯ゲーム機では初の収録がされた。
なお、現在F1が行われている南コースに関しては、1995年の開催以降、プレイステーション用ソフト「Formula1」(ソニー・コンピュータエンタテインメント、1996年発売、収録データは1995年のもの)を始め、大半のF1ゲームに収録されている。