ネバド・デル・ルイス火山(Nevado del Ruiz)は、コロンビアにある活火山である。コロンビアの火山の中で最も高く、最も北に位置している。過去に1595年と1845年に大噴火し、ラハールによりそれぞれ636人、約1000人の死者を出していたが、長年このことは忘れ去られてしまっていた。
1984年11月、ネバドデルルイス山は約140年ぶりに噴火活動を開始。翌1985年9月11日、水蒸気爆発により火山泥流(ラハール)が発生して27km流下した(被害なし)。10月7日、コロンビア国立地質鉱山研究所がアメリカの火山学者の指導の下にハザードマップを作成・公表し、地方自治体や関係諸機関に配布したが、噴火が一時沈静化していたことなどからほとんど評価されなかった。
そして11月13日15時過ぎ、ルイス山は本格的に噴火を起こし、21時頃に最高潮に達した。この際発生した火砕流により山頂の雪や氷と雲が溶け、大量のラハールが発生した。ラハールの厚さは最大で50mに及び、100km以上の距離を流下して麓のトリマ県アルメロ市を直撃した。その被害は甚大で、人口28700人の約4分の3にあたる21000人が死亡した。これを含め噴火による被害は死者23000人、負傷者5000人、家屋の損壊5000棟となり、20世紀における火山噴火で2番目の被害者を出した(第1位はプレー山の噴火(1902年、約30000人))。
生還を果たした人たちによると、再度の噴火の可能性等の警告が行われたが、以前から偽情報が多く流れていたため、あまり聞き入れられなかった。さらに、市民のパニックを恐れた(噴火で同時に死亡)市長がラジオで「噴火はない」と終始放送を続け、その日の祭りのために近隣の住民が駆けつけたことも被害を大きくした。
2001年ごろまで、町は60cm以上の灰や残骸に覆われていた。村人たちは、石や骨などを拾い集め神殿に点置した。間に合わせのフェンスで動物の侵入を防ぐことによって、現在では小さな木が育ち始めている。アルメロは、現在被災地の北約8kmに移転しており、旧市街地は墓地として保全され、今でも多くの遺体が眠っている。
この噴火の復旧には、その年のコロンビアの国民総生産の約20%にあたる77億ドルが費やされた。
また、近隣の住民からネバドデルルイス火山は「眠れる獅子」と呼ばれるようになった。最新の噴火は1991年。
アルメロに住んでいた13歳の少女オマイラ・サンチェス (Omayra Sanchez)が、泥流で足を挟まれたまま水の中から出られず、首と手だけ水上に出た状態で救助を待ったが、救助の試みもむなしく3日後に死去。息を引き取った彼女が水の中に沈んでゆく映像が世界中に報道され、多くの人の涙を誘った。