チンボラソは、エクアドル中央のアンデス山脈にある火山である。首都キトから南南西に150kmの位置にある。エクアドルの最高峰であり、山頂は地球の表面上で最も地球の中心から離れた位置にある。
海抜高度で見た場合世界一高い山はエベレストであるが、赤道近辺の方がエベレストのある場所(北緯28度)よりも地球の半径が大きく水面も高い。この結果、標高ではエベレストのほうが約2550m高いが地球の中心からの距離(約6384.4km)ではチンボラソの方が約2.1km上回る。また海抜高度で見た場合でも、チンボラソはこの山より北にある南北アメリカのどの山よりも高い。
19世紀初頭まで、地球で一番高い山だと考えられており、17世紀から18世紀にかけて、多くの人たちが登頂に挑戦している。
1802年に、南米の調査中であったアレクサンダー・フォン・フンボルトがフランス人のエメ・ボンプラン(Aimé Bonpland) ・エクアドル人のCarlos Montúfar らと共に登頂に挑戦している。彼らは5875m地点まで到達したが、高山病にかかった者が何人かいたためそこで引き返している。これは、当時のヨーロッパ人が到達した最も高い地点である(インカの人々はさらに高い山に登っていたとも言われる)。詳しくは、フンボルト『新大陸赤道地方紀行』全3巻。(大野英二郎/荒木善太訳、17・18世紀大旅行記叢書 岩波書店)
最終的にこの山は、イギリスのエドワード・ウィンパーとその弟ルイス、ジーン・アントワーヌ・カレルらによって1880年に登頂された。この登頂を疑う評論家は何人かいたが、同じ年にエクアドルのダビット・ベルトランとフランシスコ・カンパーナと共に再度登頂に成功している。詳しくは、ウィンパー『アンデス登攀記』(大貫良夫訳・岩波文庫上下 2004-05年)。
チンボラソの氷河は、国内のチンボラソ県やボリバル県の水源になっている。2005年の夏に、都市部において深刻な水不足が起こった。これは、氷河の消費が激しくなったのが早くなったの原因だと考えられている。フランスの研究者によれば、アンデス高地の氷河の溶ける量は加速度的に増えており、大部分は近いうちに溶けてしまうと予想されている。そうなれば、キト・リマ・ラパスなどの氷河の水に依存している都市は深刻な給水問題と戦うことになる。
シモン・ボリバルはこの山に触発されて詩を書いている。