スコーグスシュルコゴーデン(Skogskyrkogården,森の墓地)は、スウェーデンの首都ストックホルム郊外にある共同墓地。その設計コンセプトと造形は、ナショナル・ロマンティシズムから北欧新古典主義を経て、成熟した近代建築へと到達した同国の建築潮流の変遷を反映している。
スコーグスシュルコゴーデンは、ストックホルム南部のEnskedeを敷地として、1914年から1915年にかけて行われた新しい墓地の設計コンペ「ストックホルム南墓地国際コンペティション」の結果として生まれた。同国ではじめて火葬を前提とした葬祭場と墓地が計画されたことでも知られている(結果的にはこの墓地の火葬場が完成したのは1940年であり同国初ではない)。当時まだ無名であった若き建築家グンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェレンツ(Sigurd Lewerentz)の協同応募案が1等に選ばれ、二人が設計者として指名された。敷地は松の木が生い茂った古い砂利の採石場であった。コンペの結果が発表されてから、この墓地の主要施設である森の火葬場が1940年に竣工するまで、25年間という異例の長期間にわたり設計と施工が続けられた。彼ら二人の建築家にとって事実上のメジャーデビュー作であり、とくに1930年代半ば以降に森の火葬場を一人で担当することになったアスプルンドにとっては、竣工まで見届けた最後の作品となった。アスプルンドにとってこの墓地はだれもが認める彼の代表作であり、建築家としての生涯をこの作品に捧げた。アスプルンドの死後はレヴェレンツがランドスケープの設計を引き継いだが、彼らの死後も墓地の工事は現在まで断続的に続けられている。
スコーグスシュルコゴーデン(とくに以下は「森の火葬場」について)の建築史上における主な意義は、以下の通り。 1.20世紀前半の建築潮流が次々に変化した時期に設計されたにも関わらず、今日におよんでも古さを感じさせない時代を超越したデザインを確立したこと。
2.単に効率よく葬儀や火葬を行うことができる機能的な解決にとどまらず、葬儀に参列する遺族の深層心理にまで踏み込んだ建築計画となっていること。
3.北欧人にとって精神的な故郷といえる「森」へ還って行く人間の運命を、直感的に悟らせるような建築表現を実現したこと。
とくに3は、進歩主義が全盛時代だった20世紀前半において、自然の一部として生きるべき人間の摂理を表現した建築作品として、現代の環境問題を先取りするかのような意識の次元にいち早く到達したことが高く評価できる。
1994年にスコーグスシュルコゴーデンはユネスコの世界遺産に登録された。20世紀以降の建築作品としては、世界で最も早い登録であった。Tallum Pavilionでは、墓地に関する展示が見られるほか、これを手がけた二人の建築家についての展示を見ることができる。
ここに埋葬されている有名人には、以下の人々を挙げることができる。
この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた。