99.72%という高純度鉄で作られており、表面にはサンスクリット語の碑文が刻まれている。直径は約44cm、高さは約7m、地下に埋もれている部分は約2m。
現在はデリー南部郊外メヘラウリー村のイスラム教礼拝所やその他の種類の歴史的建造物が集まったクトゥブ・コンプレックス(Qutb Complex)内にあり、インド有数の観光スポットになっている。紀元415年に建てられたといわれる。地上部分は1500年以上ものあいだ錆びが内部に進行していないが、地下部分では腐食が始まっている模様である。
鉄の原料となる鉄鉱石はFe2O3 、Fe3O4など自然界では酸化鉄の状態で安定し存在している。酸化鉄から酸素を取り除いたものが鉄(Fe)である。自然界において鉄(Fe)は不安定な状態にあり、酸素を取り込んで安定化しようとする。その過程で発生するものが錆である。
「鍛造」を参照
現代では錆びない鉄としてステンレス鋼が知られている。ステンレス鋼は、鉄(Fe)に、クロム(Cr)とニッケル(Ni)を一定量加えたものである。金属の表面に酸化皮膜を形成することで錆びの発生を防いでいる。ステンレスは1913年に開発された。
古代の鉄で錆びない鉄といえばダマスカス鋼が有名である。鉄柱もダマスカス鋼ではないかと言われている。ダマスカス鋼も鍛造である。ただし、ダマスカス鋼は錆びにくいというだけで、まったく錆びないというわけではない。またダマスカス鋼は、錆びない鉄というよりもその表面の模様の美しさで注目されている。
前述のように、鉄柱が純度の高い鉄製だから錆びないというのは誤りである。金属工学の専門家によれば、99.72%の純度ならば50年ほどで錆びるという。1500年もの間風雨に晒されながら錆びなかった理由は、鉄の純度の高さではなく不純物の存在にあるという仮説が有力である。
インドで産出される鉄鉱石にはリン(P)が比較的多く含まれている。また、インドでは鉄を精製する際にカッシア・アウリキュラータ(英: Cassia auriculata、学:Senna auriculata、和:ミミセンナ)というリンを含む植物を加えていた記録があるという。リンを豊富に含んだ鉄を薄い円盤状にして加熱しながら叩くと、鉄の表面はリン酸化合物で覆われる。その円盤を積み重ねてさらに叩いて一体化させれば、鉄柱の表面がリン酸化合物でコーティングされ、錆に強い鉄柱が完成するというのである。この説の詳細は、日本テレビ『特命リサーチ200X』で紹介された。
リンには鋼材の強度を低下させる性質もあり、多量に含むと脆くなり成型が困難になることが知られている。5世紀頃のインドに、リン酸鉄が錆に強いという知識があった、リンと鉄の成分バランスを調整する技術があったのだとすれば驚きである。しかしそのような技術が仮にあったとしても継承はされなかったようだ。
また、「この柱は地中深くに達し、地中を支配する蛇の王ヴァースキ(Vasuki)の首に刺さっている」という伝承があり、かつては観光客たちがその不思議な力にあやかろうと柱を触ったり、中には上までよじ登った者もいるという。現地の人々は体に油を塗って太陽光線から肌を守る習慣があり、その油が柱につくことによって錆を防いでいるのではないかという説もあるが、現在、柱の周りは柵で囲われているため、人が直接触れることは出来ない。
英科学専門誌ネイチャーに、ダマスカス鋼でできたこの柱の製造にはカーボンナノチューブテクノロジが使われていたらしいという論文が掲載された。それによると、電子顕微鏡で観察するとナノチューブ特有の格子構造が確認できたという。