バン・ダルガン国立公園(アルガン礁国立公園)は、ヌアクショットとヌアディブーの間に位置する、モーリタニア西岸の国立公園。ティミリス岬を中心とする12000km²の国立公園で、面積のおよそ半分は海域である。沖合いには暖流と寒流がぶつかる潮目があるため、魚が多く集まり、それを目当てとする鳥類や海棲哺乳類も多く集まる。とりわけ、公園内のティドラ島、ニルミ島、ナイル島、キジ島、アルガン島などを含む砂州は、渡り鳥の楽園と化している。こうした鳥類と海洋生物の多彩さが評価され、ユネスコの世界遺産に登録されている。
バン・ダルガン国立公園は、1976年に設定された。1982年には公園のうち、11730km²がラムサール条約の登録地となり、1989年には世界遺産となった。
モーリタニア本土の砂漠化は深刻であり、植物相にはさほど見るべきものはない。反面、動物相、特に鳥類の多彩さは特筆に値する。バン・ダルガン国立公園には、およそ700万羽の渡り鳥が飛来し、そのうち300万羽がこの地で越冬する。ヨーロッパ大陸やシベリアなどから飛来する渡り鳥もいる。数もさることながら、オオフラミンゴ、モモイロペリカン、シロペリカン、クロアジサシ、ダイゼン、ハジロコチドリ、オオソリハシシギ、アカアシシギなど、種類も豊富である。
海棲哺乳類に目を移すと、ウスイロイルカ、ハナゴンドウ、マイルカ、シャチ、ナガスクジラ、チチュウカイモンクアザラシなど、こちらも多彩である。
公園は先住民族(後述)を除けば、一般人の立ち入りは認められておらず、保護はよく行き届いている。この静かな環境の中で、アオウミガメやタイマイの繁殖も確認されている。
公園内には500人ほどの先住民族イムラゲン人が住んでいるが、彼らはイルカの習性をうまく利用した伝統的なボラ漁を営んでいる。ボラ漁は適正なものだが、公園指定地域のすぐ外では乱獲が行われ、水産資源の悪化が懸念されている。
ティドラ島など、公園内の島からは石器時代の人類の生活跡が発見されている。かつて、沿岸部もサハラに緑が溢れていた時期には、肥沃な三角州が形成されていたと推測されている。
近世以降は、オランダ人、ポルトガル人、フランス人などが一帯の支配権を争い、めまぐるしく統治者が交代した。バン・ダルガン(アルガン暗礁)の名が示すように一帯は暗礁の多い浅瀬が広がっており、1816年にはフランスのフリゲート艦メデューズ号が暗礁に乗り上げ、多くの犠牲者をだした。
この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた。