特色
アラビア海からの湿った風が、この地域の独特な生態系を育んでいる。その風のおかげで、砂漠地帯であるにもかかわらず、絶滅危惧種を含む珍しい植生が見られるのである。
動物相で特筆すべきは、保護区の名前にある通りアラビアオリックスである。この動物はユニコーンのモデルになったとも言われる美しい角が特徴だが、その角を狙った狩猟の対象にもなり、数を減らしていった。そして、1972年には野生種は絶滅した。
オマーン国王カーブース・ビン=サイードは、アラビアオリックスの保護区の設定を目指し、1982年にアメリカ動植物保護協会から譲り受けた10頭をこの地に再導入し、世界で初めての試みとして、放し飼いで野性に帰した。
アラビアオリックス以外で棲息している特徴的な哺乳類や鳥類には、以下のものがいる。
- アラビアオオカミ ()
- アラビアガゼル ()
- カラカル
- ヌビアアイベックス (Nubian Ibex)
- フサエリショウノガン
- ラーテル
世界遺産
登録基準
この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
登録抹消理由
登録から間もない1996年には400頭にまで達したものの、以降は密猟の取締りの不十分さなどから数を大幅に減らした。さらに、オマーン当局が保護区の設定区域の90%削減を打ち出した結果、第31回世界遺産委員会(2007年)で世界遺産としての「顕著で普遍的な価値」は喪われたと判断された。
出典
- 国連環境計画のアラビアオリックスの保護区の説明
- ユネスコ世界遺産センターによる登録抹消のプレスリリース
- 水村光男 監修『オールカラー完全版・世界遺産 第3巻・アジア1』講談社+α文庫、2002年