ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット(Circuit Gilles Villeneuve, サーキット・ジル・ヴィルヌーヴまたはシルキュイ・ジル・ビルヌーブ)はカナダ、ケベック州モントリオールのセント・ローレンス川の中州にあるサーキット。サーキットが建設された当初の名称はその中州の名からサーキット・イル・ノートルダム(Île Notre-Dame Circuit)と呼ばれていたが、1982年に地元ケベック出身のF1ドライバージル・ヴィルヌーヴが事故死したため、業績を讃えてその名を冠することとなった。スタートライン上には"Salut Gilles"(やあ、ジル)とペイントされている。全長・4361m。
敷地は公園内にあり、レースウィーク以外は市民の憩いの場となっている。1976年のモントリオールオリンピックではボート競技の会場であった。
1978年より1987年を除きF1カナダGPが毎年行われていたが、2008年10月7日の世界モータースポーツ評議会(WMSC)で2009年のF1カレンダーから削除された。F1以外のモータースポーツはWSPCやチャンプカーのレースも行われていた。
当初はスタート・フィニッシュラインやピットがヘアピンコーナーの出口(コース図左端)にあったが、その後反対方向(コース図右端)へ移設された。安全性のためレイアウトも改修され、ヘアピン立ち上がりの高速S字コーナーがほぼ直線に近いゆるやかなカーブとなった。ストレートをヘアピンやシケインでつないだ典型的なストップ・アンド・ゴー・タイプのサーキットで、高速からのブレーキングが難しく、ブレーキパッドの消耗も厳しい。エスケープゾーンが狭いため、コースオフがクラッシュにつながりセーフティカーの出動場面がよく見られる。特に最も長いストレートの後にある最終シケインは、F1サーキットの中でも難関として数えられる。減速を誤ると縁石に乗ってマシンが跳ね、コーナー外側のコンクリートウォール(通称「恥辱の壁:Wall of Shame」)にクラッシュしてしまう。1999年にはデイモン・ヒル、ミハエル・シューマッハ、ジャック・ヴィルヌーヴらのチャンピオン経験者が相次いでクラッシュする波乱の展開が見られた。ちなみに、この最終シケイン横にそびえるウォールの脇には、「ようこそケベック州へ」とフランス語で書かれた看板がある。
水と緑に囲まれた美しい環境や、開放的な観客の雰囲気から、当地でのレースを楽しみにするF1関係者は多い。以前はレースウィーク前日に、各チームのメカニックがガレージの不用品で「手漕ぎボート」を造り、オリンピックのボートコースで競争するイベントが毎年催されていた。