スライマン=トーないしスレイマン=トーは、キルギス第二の都市オシ近郊にある山である。山の名前は「スライマーンの山」の意味で、預言者のスライマーン(ソロモン)が逗留したとされる伝説に従って18世紀に名づけられたものである。
崇拝の対象となってきた文化的景観として、2009年には、キルギスでは初めてユネスコの世界遺産リストに登録された。
かつては、イスラーム伝播以前からの伝統的な信仰にとっても、ムスリムにとっても重要な巡礼地となっていた。この山はいまなお地元のムスリムたちの崇拝の対象となっており、モスクのある最高峰への階段が設置されている。そのモスクは1510年に建設されたもので、20世紀に大規模な修復をほどこされたものである。
この山の信仰の歴史は古く、新石器時代に遡る線刻画などが刻まれた礼拝所なども残っている。
岩山はフェルガナ渓谷の平原から出し抜けに屹立しており、優れた景観とともに、地元民にとっても旅人にとっても人気の場所となっている。スライマーンは『クルアーン』における預言者の一人で、山には彼の墓とされてきた社もある。伝説によれば、頂上にあるその社に登り、聖なる岩を横切っている広場で腹ばいになると、健康な子供を授かるとされている。山の木々や茂みには無数の小さな布切れが結び付けられている。それらは訪れた人々が願掛けで結んでいったものである。
山にはソビエト連邦時代に作られた博物館もあり、出土した考古資料や歴史についての展示をしている。山腹のふもと近くは共同墓地になっている。
スライマン=トーは、中央アジアにおいて崇拝の対象になってきた霊峰の優れた例証として、2001年1月29日に世界遺産暫定リストに登載され、2009年の世界遺産委員会で世界遺産リストに登録された。文化遺産としてのカテゴリーは「サイト」で、文化的景観とも位置付けられている。
スライマン=トーについては、石器時代から青銅器時代にかけての遺跡、線刻画群、礼拝所、参詣道、イスラーム建築、博物館の6つの要素が評価されている。
この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。
公式の登録名は Sulaiman-Too Sacred Mountain(英語)および Montagne sacrée de Sulaiman-Too(仏語)である。
その日本語訳は文献によって揺れがある。