ゲベル・バルカルは、スーダン北部にある高さ98mの小山。ハルツームの約400km北にあたり、ナイル川の屈曲部沿いにある。
紀元前1450年前後に、エジプトのファラオ、トトメス3世がこの地方まで領土を拡げた時には、ゲベル・バルカルを南限とした。そこに彼は都市ナパタを建設したが、300年ほど後に、そこはクシュ王国の首都となった。
ゲベル・バルカル周辺の遺跡には、少なくとも13の神殿と3つの宮殿が含まれる。それは1820年代の探検家の記録でヨーロッパにも知られていたが、本格的な発掘調査はジョージ・レイスナーの登場を待つ必要があった。彼は1916年からハーバード大学とボストン美術館の共同発掘隊のもとで調査に当たった。1970年代には、セルジョ・ドナドーニを責任者とするローマ大学 (Università degli Studi di Roma "La Sapienza") の調査隊が発掘を行い、80年代にはそこにティモシー・ケンドールを長とするボストン美術館の調査隊が合流した。
2003年に周辺のナパタ地方の遺跡群とともに、「ゲベル・バルカルとナパタ地方の遺跡群」として世界遺産に登録された。ゲベル・バルカルにあるアモン神殿のような大神殿は、地元民から神聖視されていたと見なされている。
登録面積は核心地域が121ha、緩衝地域が40ha。
エル=クッル(El-Kurru, ID1073-002)エル=クッルにはクシュのナパタ文化期の墓所遺跡があり、34基の墓には王族の墓も含まれる。レイスナーが発掘した。登録面積は核心地域が4.5ha、緩衝地域が6.5ha。
ヌリ(Nuri, ID1073-003)ヌリにもレイスナーが発掘したナパタ文化期の墓82基がある。登録面積は17ha、緩衝地域はなし。
サナムはメロエ市内にある墓所遺跡で、「宝物」と呼ばれる建築意図未解明の巨大建築物もある。登録面積は20ha、緩衝地域はなし。
ズマ(Zuma, ID1073-005)ズマはメロエ文化末期(4世紀)以降の墓所遺跡だが、発掘は不十分である。登録面積は20ha、緩衝地域はなし。
この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた。