黄山(こうざん)は、中国・安徽省にある景勝地。伝説の仙境(仙人が住む世界)を彷彿とさせる独特の景観から、古代から黄山を見ずして、山を見たというなかれと云われ、数多くの文人が訪れた。
黄山は秦の時代には黟山(いざん)と称されたが、唐の時代には現在の黄山の名前に改められた。
黄山に立ち並ぶ山々は古生代に出来たもので、その石や岩は氷河や風雨による浸食が一億年に亘って繰り返され、現在の様な断崖絶壁の景観ができあがった。海から流れ込む湿った空気は海抜1000m以上の峰々に漂い、大量の霧や雲を発生させている。三主峰と呼ばれる蓮花峰、光明頂、天都峰があり、その他69の峰がある。そして、荒涼とした風景を彩る「黄山松」は、岩の割れ目に根をはり、強い生命力を持つとして、尊ばれている。以上の怪石、雲海、奇松に温泉を加え、「黄山の四絶」と称された。これらから、天下の名勝、黄山に集まると云われ、古代から中国の人々が黄山の美しさを「天下第一」と称える所以である。幾多のスポットには、その独特の発想で名前が付けられた
この名声で多数の文人が憧れて訪れ、水墨画、漢詩など中国独特の文化を生み出した。東山魁夷は黄山を「充実した無の世界。あらゆる山水画の技法が、そこから生まれたことが分かる」と評している。
中国人の精神的な拠り所となってきた黄山の周辺には、道教や仏教の修行の場として、おおくの寺院が建てられている。黄山の北に位置する九華山は、97の寺院が集まる地蔵菩薩信仰の総本山で、黄山で修行した僧侶が開いたと云われ、その僧侶が地蔵菩薩の化身と言い伝えから、この地が聖山となった。
黄山の名前は現在3箇所で使われている。つまり、1987年成立した黄山市(元の安徽省徽州地区屯渓)、黄山区(元の安徽省太平県)、黄山風景区(湯口)。
屯渓は当地の政治経済文化の中心地であるため、多くの場合この地を経由して湯口にいたり入山する。(屯渓-湯口 1.5時間)
なお合肥市方面からは太平から入山するのが一般的である。
屯渓へは航空機、列車、高速道路のいずれかで向かう。
上海方面からは列車で屯渓に向かう(10-12時間)のが一般的であったが、徽杭高速道(杭州-黄山 2時間)が開通してからはチャータバスで向かう(5-6時間)ことが多くなっている。
黄山内には3つの索道がある。
雲谷 2808メートル、高低差773メートル。日本、オーストリア製 51人乗り 玉屏 2176メートル、高低差752メートル。オーストリア製 6人乗り 太平 3709メートル、高低差1014メートル。オーストリア製 101人乗り(中国国内最大規模)