国立民族学博物館

国立民族学博物館(こくりつみんぞくがくはくぶつかん、National Museum of Ethnology)は、大学共同利用機関法人・人間文化研究機構を構成する大学共同利用機関。民族学・文化人類学を中心とした研究・展示を行っている、博物館を持った研究所である。略称は民博(みんぱく)。大阪府吹田市の万博記念公園にある。現在、総合研究大学院大学の文化科学研究科も設置されている。

根拠法は、国立大学法人法第2条の3項・4項である。

機構長は金田章裕。館長は須藤健一。

設立の経緯と沿革

東京帝国大学の学生だった渋沢敬三(後の蔵相、日銀総裁)が1921年に東京・三田にある自邸の車庫の屋根裏部屋を利用して、アチック・ミュージアム(屋根裏博物館)をつくり、二高時代の同級生らと共に動植物の標本や民具などの蒐集を始めた。1935年には渋沢と白鳥庫吉らを中心に日本民族学会が設立され、国立民族学博物館設立を構想し、政府に陳情したが、戦局の悪化から採り上げられなかった。そこで、渋沢は1937年に自らの手で東京・保谷に博物館を建設し、アチック・ミュージアムに収蔵されていた二万点に及ぶ民具標本を移転させ、建物と資料を日本民族学会に寄贈し、日本民族学会附属研究所と附属民族学博物館となった。しかし、一学会だけで運営・維持することは難しく、また、自らの死期を悟った渋沢は1962年に民族学博物館所蔵の資料を文部省史料館(現・国文学研究資料館)に寄贈し、将来に国立民族学博物館が設立された時には、これらの資料を移管する旨の約束を政府との間で交わした。

渋沢の死後、1964年に日本民族学会などは国立民族研究博物館の設置を政府に要望し、1965年には日本学術会議が総理大臣に国立民族学研究博物館の設置を勧告した。一方で、1970年に開催された日本万国博覧会では、岡本太郎がチーフプロデューサー・小松左京がサブ・プロデューサーを務めるテーマ館に世界中の神像や仮面、生活用品などを陳列するため、東京大学教授の泉靖一と京都大学教授の梅棹忠夫らが中心となって、世界中から資料を蒐集していた。

万博終了後に、政府は会場の跡地利用について、文化公園とする基本方針を打出し、その中心施設として従来から要望が高かった「国立民族学博物館」の設置が決定された。1973年に文部省内に創設準備室が設置され、梅棹が準備室長に就任。1974年に改正国立学校法施行により、大学共同利用機関として創設され、梅棹が初代館長に就任した。

博物館の工事は1977年に竣工し、開館式典を挙行。万博のテーマ館に出展するために蒐集されていた資料共に、文部省史料館に寄贈されていた資料が渋沢との約束どおり引継がれ、11月17日から展示の一般公開が始まった。

1989年4月に総合研究大学院大学の地域文化学専攻・比較文化学専攻の二専攻が設置され、大学院教育を開始。6月には特別展示館が竣工。

2004年4月に国立大学法人法施行に伴い発足した、大学共同利用機関法人人間文化研究機構の所管となる。

展示

本館の展示は地域展示と通文化展示に大きく分かれている。地域展示ではオセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、日本を含むアジア各地域に分かれ、オセアニアから東回りに世界を一周するようになっている。通文化展示は地域、民族毎に分けての展示ではなく、音楽と言語など世界の民族文化を通じて概観する展示がある。

開館当初からビデオテークが設置され、世界中の生活や文化を紹介する映像を利用者が選択し、視聴することができる。また、1999年には映像と音声による展示解説を行う携帯型の「みんぱく電子ガイド」が登場した。

本館の東南には4階建て(内、展示スペースは1階と2階)の特別展示館が隣接し、所属している研究者が特定のテーマで研究した成果を紹介する展示が行われている。

歴代館長

  1. 梅棹忠夫 (1974年6月 - 1993年3月)
  2. 佐々木高明 (1993年4月 - 1997年3月)
  3. 石毛直道 (1997年4月 - 2003年3月)
  4. 松園万亀雄 (2003年4月 - 2009年3月)
  5. 須藤健一 (2009年4月 - )

建物

  • 鉄骨鉄筋コンクリート造 地上4階、地下1階
  • 敷地面積:40,821m2
  • 延床面積:51,225m2
  • 建築面積:17,089m2
  • 設計:黒川紀章
  • 第19回 毎日芸術賞受賞
  • 第20回 BCS賞(建築業協会)受賞
  • 第1回 公共建築賞優秀賞受賞

人物

  • 石毛直道 - 文化人類学、第3代館長、名誉教授
  • 岩田慶治 - 文化人類学、名誉教授
  • 印東道子 - オセアニア考古学、民族社会研究部教授
  • 宇田川妙子 - 南ヨーロッパ研究・性研究、先端人類科学研究部准教授
  • 梅棹忠夫 - 民族学・比較文明論、初代館長、名誉教授、顧問
  • 大森康宏 - 映像人類学・民族誌映画、名誉教授
  • 片倉もとこ - 社会地理学・民族学、名誉教授
  • 加藤九祚 - 北・中央アジア民族史、名誉教授
  • 熊倉功夫 - 日本文化史、名誉教授
  • 小長谷有紀 - 文化人類学・牧畜文化論・モンゴル研究、民族社会学研究部部長
  • 小山修三 - 民族考古学、名誉教授
  • 近藤雅樹 - 民俗学・民具研究、民族文化研究部・教授
  • 佐々木高明 - 民族学・東・南アジア農耕文化史、第2代館長、名誉教授
  • 祖父江孝男 - 心理人類学、名誉教授
  • 立川武蔵 - 仏教学・インド研究、名誉教授
  • 中牧弘允 - 宗教人類学・経営人類学、民族社会研究部教授
  • 野村雅一 - 文化人類学、名誉教授
  • 松園万亀雄 - 社会人類学、第4代館長、名誉教授
  • 松原正毅 - 社会人類学・遊牧社会論、名誉教授
  • 吉田憲司 - 文化人類学・博物館人類学、文化資源研究センター教授

所蔵品

  • 田中忠三郎氏がコレクションしたアイヌに関する資料

交通

  • 大阪モノレール 公園東口駅 徒歩13分
  • 大阪モノレール 万博記念公園駅 徒歩15分
  • 阪急バス 自然文化園・日本庭園中央バス停 徒歩3分

関連項目

  • 民族学
  • 三猿

参考文献

  • 梅棹忠夫『民族学と博物館(「梅棹忠夫著作集」15巻)』(中央公論社、1990年)
  • 梅棹忠夫『民博早わかり』(平凡社、1989年)
  • 佐野眞一『旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三』(文藝春秋、1996年)

外部リンク

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ヒントとヒント
Moka
2017年11月12日
Super interesting museum if you're into learning about different cultures of the world. I would love to come back here again and again. It would be nice if they had English descriptions though.
たか????
2016年6月19日
立命館大学、千里金蘭、阪大などはキャンパスメンバーズにつき無料。一般向け無料開放日も年に何度かあります。万博記念公園駅側からアクセスしたら万博公園入園料が別途必要ですが公園東口から来れば無料です。館内は写真撮影自由。展示資料数がとにかく膨大で広いので軽く回るだけでも2時間は見ておいたほうがよろしいかと。
わに たけざわ
2018年10月4日
1974年開館の、博物館を併設した民族学の重要な研究施設。世界各国から集めた展示物を見て回ると、さながら世界旅行をした気分になります。Est-1974.Important laboratory of Ethnology with museum. If you watch various display, you may feel as if travelling around the world.
life is blues
2015年9月30日
館名から何かおカタイ印象を受けますが。好奇心をくすぐる展示品がズラり。世界の楽器や音楽が好きな方はぜひ行ってみてください♪
kaname kga
2019年3月10日
民博良いなあ。自分のルーツって何だろう?って考えさせられます
Yasuyo
2013年12月19日
か現在、改修中で入館料無料。ただし、公園内に入るには250円必要。民族学博物館は無料。2014年3月中旬まで?
7.6/10
3,074人がここに来ました
地図
日本、〒565-0826 大阪府吹田市千里万博公園10−1 ルートを検索
Mon-Tue-Thu-Sun 10:00 AM–4:30 PM

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