コスケール洞窟(コスケールどうくつ、英: Cosquer Cave、仏: Grotte Cosquer)は、フランス・マルセイユに近い地中海の海底で発見された洞窟である。コスキュール洞窟とも表記される。
1991年、フランス・マルセイユに近い地中海の海底から、壁画に彩られた旧石器時代の洞窟が発見された。発見者であるアンリ・コスケールにちなみ、コスケール洞窟と名付けられた。周辺はカランクと呼ばれる純白の岩壁がそびえ立った地形が見られる場所で、洞窟はカランク・ド・モルジウーの付近にある。
モルジウー岬の海面下37メートルのところに小さな入り口があることにコスケールが気づいたのは、1985年頃とされる。洞窟発見は、そのおよそ5年後であった。海底の入り口から狭いトンネルをおよそ150メートル泳いだところに、洞窟は現れる。
鍾乳石の壁面の上に黒い隈取りで残された手のひらの影(ネガティブ・ハンド)がある。洞窟壁画も発見された。少なくとも2万3000年前のものとされ、当時は、地球が最終氷期(ヴュルム氷期)の最も寒い時期にあった頃で、地中海の海面は現在よりも約120メートルも低かった。アルタミラ洞窟やラスコー洞窟、ニオー洞窟といった洞窟(フランコ・カンタブリア地方洞窟)に描かれた動物は、馬やビゾン(野牛)といった大型草食動物を中心とした陸上動物であるが、コスケール洞窟の壁画からは、アシカ、ペンギン、魚、クラゲといった水棲動物が多数発見されている。これらの絵が当時の自然環境を反映していると考えるならば、約2万5000年前の地中海にはペンギンが棲息していたことになる。
コスケール(Cosquer)は、フォス・コア(Foz Coa)、ショーヴェ(Chauvet)とともに旧石器美術の3Cと呼ばれる。コスケール洞窟には、少なくとも7000年 – 8000年の期間をあけて、2度にわたって人間が訪れ、壁画を残している(第1期は約2万6500年前、第2期は約1万8500年前)。
コスケール洞窟では、46ものネガティブ・ハンドが発見されている(黒い地で描かれているものは34、赤い地で描かれているものは12)。 描かれている手は左手が圧倒的に多い。これらの手のうち、65%にあたる25の手が、その指の一部分を欠いている。人差し指や中指を欠いた状態での痕跡が残されている。コスケール洞窟の表面には、不定形の指の線が見られ、マカロニ図形などと呼ばれるが、その意味はわかっていない。