ダラム大聖堂(ダラムだいせいどう、Durham Cathedral)は、イングランド北東部のダラム州ダラム市にある英国国教会の大聖堂である。
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市街地から見た大聖堂 | |||
英名 | Durham Castle and Cathedral | ||
仏名 | Cathédrale et château de Durham | ||
登録区分 | 文化遺産 | ||
登録基準 | 文化遺産(2), (4), (6) | ||
登録年 | 1986年 | ||
拡張年 | 2008年 | ||
備考 | |||
公式サイト | ユネスコ本部(英語) | ||
世界遺産テンプレートを使用しています | |||
ウェア川から見た大聖堂 ダラム大聖堂(ダラムだいせいどう、Durham Cathedral)は、イングランド北東部のダラム州ダラム市にある英国国教会の大聖堂である。
イングランド北東部、ダラム州ダラム市にあるダラム大聖堂は1093年に創建され、今もなおキリスト教信仰の中心地としての地位を保っている。この大聖堂は、ノルマン様式の教会としてはヨーロッパで最も精巧な建築物の例とされており、ユネスコにより、そばに立つダラム城と共に世界遺産に登録されている。大聖堂とダラム城は、ウェア川を見下ろす崖の上に建てられており、パレス・グリーンと呼ばれる緑地を挟んで向かい合っている。
ダラム大聖堂は、教会の建物とリンディスファーン島(現在のイングランド北東部にあたるノーザンブリアの沖にある島で、聖域とされた)の聖人リンデスファーンのカスバート(7世紀)の聖遺物を保有しており、一般公開されている。またセント・オズワルド・オブ・ノーザンブリア(オズワルド王)の頭部と、聖ベーダの遺体も安置されている。さらに、325段ある階段を上ると、高さ66メートルの塔の最上階にたどり着く。そこからはダラムの街と周辺地域の眺望を楽しむことができる。
ダラムの主教は代々、絶大な権力を持つ領主主教(英国国教会の主教でありながら領地の支配者をも兼ね、聖俗両界において権力を振るった)であり、19世紀の半ばまでその権勢が衰えることはなかった。今日においてもその地位は英国国教会中第4位であり、そのため現在ではダラム州を示す表示物に「領主主教の土地」という添え書きがなされているものも多い。
ダラムの主教座の起源は、西暦635年頃ノーサンブリア王オズワルド(King Oswald)の命を受けて聖エイダン(Saint Aidan)が創設したリンディスファーン司教座領である(注:国教会では「主教」、カトリック教会では「司教」と呼ばれていることにならう)。 その地位は664年にヨークの司教の下に移管されて途絶えたが、678年にはカンタベリー大司教の手によって復活した。 リンディスファーンの宗教共同体は多くの聖人を輩出したが、その中でも聖カスバート(Saint Cuthbert,)(とその伝説)はダラム大聖堂創建に決定的な役割を果たすことになる。
875年、ヴァイキングによる襲撃を繰り返し受けたため、リンディスファーンの僧侶たちは島から逃れ、聖カスバートの聖遺品と共に各地を転々とした。リンディスファーン司教座は882年にチェスター・ル・ストリート(現ダラム州)に宗教共同体が設立された後、995年まではこの地にあったが、更なるヴァイキングの襲来により、僧たちは聖遺品と共に再び逃れねばならなくなった。
現存する大聖堂は、ダラムの初代領主司教であったウィリアム・オブ・セント・カリレフの下で初めて計画、建立された。1093年に建設が始まり、ウィリアムはこの計画の完成を見ず1135年に亡くなったが、計画は後継者であるラヌルフ・フランバードに引き継がれた。
ダラム大聖堂は今もなお、英国国教会ダラム主教区ダラム主教座の地位にある教会である。また、映画『ハリー・ポッター』シリーズの中でホグワーツ魔法魔術学校として登場する。映画の中ではこの有名な塔の一群の先端には尖塔がかぶせられ、ロケ地がダラム大聖堂であることが観客に分からないよう目立たなくされている。一方、大聖堂の内部は映画『エリザベス』(1998年)の撮影に使用された。
この地に伝わる伝説によると、このときの僧たちの放浪のさい、茶褐色(dun)の牝牛をさがしていた乳絞りの2人の少女に出会った。少女たちを先頭にして歩いていると、ウェア川が蛇行しているためそこに輪のような形に突き出した土地に、いつしか入っていた。このとき聖カスバートの棺をどうしても動かすことができなくなったので、「これは『新しい教会をこの地に建てるべし』という神のお告げである」と解釈されたのだという(注:茶褐色はダラム大聖堂とダラム城の建物の色、牝牛は豊かさの象徴(=ダラム主教座領の繁栄の隠喩)である。またダラム(Durham)の古名はダンホルム(Dunholme)であった)。この地が選ばれたことの現実に即した理由としては、一つは防御に大変適した地形であったこと、そして当時の司教アルドゥーンが代々のノーザンバーランド伯と強い姻戚関係を結んでいたことから、ここに共同体を作れば伯爵の庇護を受けられる、との思惑もあったものと思われる。
大聖堂内部の様子。天井にX印型のアーチが確認できる。 この大聖堂が注目に値するのは、建物下部への負担を軽くするために
この2点にある。こうした造りは、ダラム大聖堂が12世紀後半にフランス北部で見られるようになるゴシック様式建築の先駆であることを示している。また、建設に際してノルマン人の石工が関与していたことは間違いないが、建物自体はロマネスク様式であると考えられている。交差型のアーチと肋骨状に梁を通したアーチ型屋根を巧みに利用したことで、それ以前よりもはるかに凝った、そして複雑な一階部分の設計が実現することになった。さらに外壁を支える技術の利用により、より高さのある建物の建設と、より大きな窓をその側壁面にとることも可能になった。
この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた。
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